2023年度 経済情報研究科修了発表会を開催しました

公開日 2024年03月14日

開催日時:2024年2月29日(木)10:40~13:50
場所:尾道市立大学内E棟304講義室

今年度からは尾道市立大学での開催になりました。昨年度まではコロナウイルス感染症拡大防止のため、オンライン(ライブ)での開催でしたが、今年度は本学学生、教職員に向けて対面で開催し、対面での参加が難しい学生に向けてはオンライン(ライブ)配信しました。

修了予定者3名は各自の研究成果を発表し、その後に参加した本学学生、教員からの質問に対して的確かつ明確に回答し、研究成果について理解を深める機会になりました。

 

当日の論題および要旨

「大学近郊の下宿存続要因に関する考察―尾道市立大学周辺を事例に―」

 本論文では、尾道市立大学の事例をもとに、下宿経営とアパートやマンション経営との差別化の要因を探った。大学生を対象とした下宿経営における顧客が充実した学生生活を送れるよう支援するために大家が目指すべきことを考察した。 その結果、事例では単なる賃貸物件の賃貸人と賃借人という関係を構築するのではなく、いずれも入居者である学生本人が快適に学生生活を送り、保護者が安心できるように日々努めていることが分かった。具体的には、下宿の大家は入居者全体を俯瞰しながら、常にどうすれば入居者に快適な生活環境を提供できるかを考え、入居者目線に立ち、入居者の心の声に耳を傾けていた。そこに、経営者として差別化を図り経営戦略を検討する上でポイントとなる要素があると言える。
 さらに、物件の設備を良くすることに止まらず、むしろそれ以上に入居者の日常生活に目を向け入居者のニーズに合わせたマーケティングを行いながら、卒業後も繋がることのできる生涯の友との出会いなど、入居者同士の「コミュニティの形成」と、彼らの「人間形成の支援」を行っていく。これこそが下宿の大家が目指すべき役割であり、それが最大の差別化の要点だと言えるのではないだろうか。

 

「収益認識に関する会計基準が売上高に与える影響―卸売業と証券?先物取引業を中心として―」

 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(2018年3月に)は、売上高の認識、測定を定めた包括的な基準であり、実務への影響も大きいと考えられる。本研究では、当該会計基準が設定された背景、従来の会計基準との相違点等を先行研究に基づき整理を行った。また、塚原?小澤?吉田?中村(2022)において当該会計基準により売上高の減少傾向がみられた卸売業と、逆に増加傾向がみられた証券?先物取引業を取り上げ、実務への影響を再検討した。
 東京証券取引所上場銘柄一覧(2023年11月末)に掲載されている卸売業(313社)および証券?先物取引業(41社)においては、有価証券報告書等に記載された「会計方針の変更」を分析した結果、いずれも当該会計基準の適用により売上高が減少する企業が多いことが明らかになった。売上高が増減した理由として、「本人と代理人の区分に関する取引」、「変動対価?顧客に支払う対価に関する取引」が多く挙げられていた。前者は売上高の増減に直接影響するものの、後者は売上高の減少理由には直接影響があるのに対し、売上高増加には直接的に影響していないこと等が指摘できた。

 

「外国人が書いた日本語文章の自然さを数値化する研究」

 本研究の目的は、外国人が書いた日本語文章の良し悪しを数値化することである。ここでいう「悪い」日本語とは、日本語として違和感がある箇所が多い文章のことである。つまり、書かれた文章の日本語としての「自然さ」が、良し悪しを表していると言える。
 提案手法では、外国人が書いた日本語文章から分散表現を生成し、これをその文章の特徴情報とする。分散表現とは、1つの単語の意味を低次元の実数値ベクトルで表現したものである。分散表現を得る際にはコーパスから学習を行うが、コーパスの質が悪ければ、得られる分散表現の値も影響を受ける。つまり、書かれた日本語文章が不自然であれば、自然な日本語文章と比べ、分散表現の値に差異が生じる。この分散表現の値の分布の差異を、KLダイバージェンスを用いることで計測する。
 外国人留学生が書いた日本語文章を収集し、その自然さの順位付けを事前に行い、提案システムの数値化結果の順位付けがそれと一致するか実験を行った。その結果、一部は順位の逆転があるものの、想定通りの順位付けが得られた。さらに、分散表現として使用する品詞を助詞と名詞に限定する改良を行った結果、順位の逆転が解消した。

 

以上、経済情報研究科修了発表会についてご報告させていただきます。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。